血に濡れた体 虚ろな瞳 フラッシュバックしてくる映像は とても悍ましいものだったのに カラダ中の血が沸騰するような高揚感 何度彼女を殺せば気が済むの? |
「ここです」 白衣の男に案内されたのは病院の地下にある死体安置所−−霊安室。 上の命令とは言えこんな所に来るのは気が進まない。それでもどうせなら自分で 選ぼうと思いここまで来たのだが。 今から行うことは死者への冒涜だ。 「今度は女の子を、という事でしたのでご用意しておきました。」 白衣の男がベッドを覆っていた白い布を取る。 現れたのは少女の死体。体つきからして15、6歳といったところか。 「先日交通事故で亡くなった少女です。身寄りもないそうなので最適かと。」 何が最適だこの悪魔め。 「詳しいデータはこのファイルに記してありますので。どうぞ。」 渡された書類を斜め読みする。 レイラ・カロウ 16歳。セントラルスクール理学部に在籍。成績は上位であり優秀な生徒として教 職員の中でも評判。運動能力も高く次の選抜会にも出場予定−−等。 なるほど才色兼備の上運動神経もよかったということらしい。どこにでも完璧に 見える人間というのはいるものだ。 もっとも美少女だ、という事前の報告を聞いていただけで彼女の顔を知っている わけではない。今も顔には白い布がかかっている。 「では、これでよろしいですか?よろしければ車の方に運ばせますが…」 いいながら男が顔の布をめくる。 了承の返事をしようとしてそちらを向くと、少女の顔が目に入った。肩までの金 髪。見覚えがありすぎるその顔。 「…っつ!?」 息を呑む。そうでなければ叫んでしまいそうだった。 違う。コレは違う。彼女である筈がない… 否応なく頭に浮かんで来た考えを打ち消す。そうだ早く返事をしなければ変に思 われてしまう。 「えぇ最高の材料です。経歴も申し分ない。」 冷静を装い答えるその下で鼓動が激しく波打っていた。 彼女ではない、それでも瓜二つなこの少女。今は物言わぬ屍となっていてもじき 、蘇る。その為にここまで来たのだから。 男が合図をすると、白衣を着てマスクをつけた男二人が担架を持って部屋に入って来た。彼女を乗せて運び出す。 病院の外には白いワゴン車が止まっていた。これに乗って私が来たのだから当然 だけれど。 運転席に男が乗り込む。後ろには少女の亡きがら。助手席には私。 「では発進致します」 いちいち断る礼儀正しいこの男のくせが嫌いではないが今は正直欝陶しい。答え るのも面倒なのだと察してくれればいいのに。 「ああ」 私が短く答えると車は動き出した。 一時間後にはあの少女の亡きがらとまた対面する。 その事が待ち遠しくもあり、また恐ろしくもあったけれど。 |